
投稿日:2025.06.25
「始めは甘く、後から樽由来のしっかり感、ヘーゼルナッツのトフィー」とは評論家による、とあるウイスキーの味の表現です。
しかし、これでピンとくる人は少ないはず。
ウイスキーの味に特有の表現がなされているからです。
ウイスキーの味の表現方法を知ると、味をイメージできるようになります。
誰かに伝えやすくもなるので、好みのウイスキーを探しやすくなるでしょう。
ウイスキーにおける味と香りの密接した関係

鼻が詰まると味がわからなくなるように、香りと味には深い関係がありますが、ウイスキーでは特にそれが顕著です。
ウイスキーの特徴を記したテイスティングノートでは、味と香りの項目は別なのに、両方に同じような表現が登場します。
本稿でも、本来は香りに分けられそうな表現も味として紹介することを、ご了承ください。
ウイスキーにおける甘さの表現

ウイスキーの甘みはバニラ系、シロップ系、チョコレート系に大別できます。
バニラ系はクリーミーな甘み、シロップ系は濃縮された甘み、チョコレートは苦みを含んだ甘みのイメージです。
それでは、それぞれを解説していきましょう。
ウイスキーにバニラ系の甘みを感じる理由
バニラのような甘味をウイスキーに与えるのは、香り成分・エステルのひとつバニリンです。
バニリンは内側を焦がした樽から主に生じます。
激しく焦がすチャーや、遠赤外線でおだやかに焦がすローストなど、焦がし具合でバニラ系の甘みは変化します。
バニラ系の甘みの具体的な表現
| バニラエッセンス | 強いバニラ味の表現に |
| カスタード | ミルキーなバニラ味 |
| カラメル | 香ばしさが加わったバニラ |
| バタースコッチ | バニラとカラメルの中間 |
| トフィ | よりカラメル寄りのバニラ味 |
ウイスキーにバニラのような甘みを感じたら、さらに具体的な表現を当てはめてみましょう。
バタースコッチとトフィは、いずれもバターと砂糖を煮詰めたお菓子です。
バタースコッチはヴェルタース・オリジナルのような味、トフィはよりカラメル感が強い味をイメージするとよいでしょう。
バニラ系の甘みを感じるボトル
スコットランド・スペイサイドやハイランド、ローランド産のボトルに、バニラ系の甘みを感じるものが多い印象です。
シェリー樽熟成のものを選ぶと、よりバニラらしさが感じられるかもしれません。
ウイスキーにシロップ系の甘みを感じる理由
ウイスキーから感じるしっかりとした甘味は、メープルシロップやはちみつにたとえられます。
これらはバニラと同じバニリンに由来すると考えられており、バニラの甘みが生まれる条件で長期間熟成されると、シロップ系の甘味へと変化する印象です。
シロップ系の甘みの具体的な表現
| メープルシロップ | 樹木の香ばしさが加わった甘み |
| はちみつ | 凝縮したまろやかな甘み |
凝縮したような甘味の表現に使われるメープルシロップとはちみつですが、両者の違いは木に由来する香ばしさを感じるかどうかです。
甘みの中に香ばしさを感じるとメープルシロップで、強くてまろやかな甘みははちみつで表現されます。
シロップ系の甘みを感じるボトル
ハーパー12年など長期熟成を経たバーボンやテネシーウイスキーに、シロップ系の甘みを感じるボトルが見つかるでしょう。
アメリカンウイスキーが多く製造されるアメリカ南部は早く熟成が進むので、スコッチのスタンダード12年でも長期熟成に分類されます。
ウイスキーにチョコレート味を感じる理由
チョコレート味を構成するのは、甘みと苦味、ナッツの風味、オイリーさです。
オイリーさとはオイルを思わせるとろみや粘り気を表す言葉で、長期熟成させたウイスキーからよく感じられます。
チョコレート味と関係が深いのは独特の甘みや苦味が生じる、シェリー樽やワイン樽で熟成したウイスキーです。
チョコレート系の甘みの具体的な表現
| ミルクチョコレート | ミルキーなチョコレート味 |
| ビターチョコレート | 甘みの少ないカカオ味の表現に |
| ダークチョコレート | より甘みの少ないチョコレート |
| ココアパウダー | カカオとも。甘みとオイリーさに欠ける表現 |
チョコレートは身近なだけに、いずれもピンとくる表現です。
ココアパウダーは後で述べるナッツ系にも分類できそうな香味です。
チョコレート系の甘みを感じる銘柄
ニッカの創業者・竹鶴正孝が愛飲したというスーパーニッカは、チョコレートを思わせる甘みで人気です。
単に甘いだけでなく、樽熟成感のある原酒が加えられているからでしょう。
ウイスキーにおけるエステリーさの表現

エステリーとは、華やかな香味に富んだウイスキーを表すのに使われる言葉です。
フルーツ(フルーティー)や花(フローラル)を連想させるものがありますが、具体的なフルーツや花で表現すると、さらに伝わりやすくなるでしょう。
フルーティーな香味としてあげられるものは、トロピカルフルーツや柑橘、ベリー、ドライフルーツなど。
フローラルな香味はラベンダー、スミレ、ヘザーなどに分けられます。
ウイスキーにエステリーさを感じる理由
発酵で生じたエステルから華やかなものを残したり、華やかなエステルが生じやすい樽を熟成に用いたりすると、エステリーなウイスキーができあがります。
たとえば柑橘系の香味を得るために、背の高いポットスチルを蒸留に用いる。
トロピカルフルーツの風味はバーボン樽、ベリー系はワイン樽、ドライフルーツはシェリー樽といった具合に、蒸留所は工夫しているのです。
フルーティー系の香味の具体的な表現
| トロピカルフルーツ | パイナップル、バナナ、ココナッツなど |
| 柑橘 | オレンジ、ライム、レモン、シトラスなど |
| ベリー | ブドウ、イチゴなど |
| そのほかのフルーツ | リンゴ、青りんご、洋ナシなど |
| ドライフルーツ | レーズン、アプリコット、プルーンなど |
テイスティングノートでは単にトロピカルフルーツではなく、さらに具体的な果物の名称まで踏み込んで表現しているケースが見られます。
求めるウイスキーの香味がより具体的になり、バーでの注文やWebでの検索に役立つでしょう、
フルーティ系の香味を感じる銘柄
グレンモーレンジィやティーリングは、フルーティさで評判の銘柄です。
前者のオリジナルは柑橘系、後者はシングルグレーンを選ぶとよりベリー系の香味が感じられます。
フローラル系の香味の具体的な表現
| ラベンダー | さわやかさもあわせもつ香味 |
| スミレ | 化粧品のような香味 |
| 石けん | ブーケのような香味 |
フローラルの表現は書ききれないほど多くありますが、慣用的である点で共通しています。
ラベンダーと表される場合、ラベンダーそのものの香味がするのではなく、言葉からイメージされる香味を表現しており、テイスティングノートに慣れていない方はイメージしづらいものです。
フローラル系の香味を感じて具体化するのが難しいと感じたら、そのまま花のような香味と伝えればよいでしょう。
フローラル系の香味を感じる銘柄
フローラルとよく称されるスペイサイド産のシングルモルトですが、中でも顕著なのはマッカラン12年です。
厳選されたシェリー樽による花のある香味は、ロールスロイスに例えられるのにふさわしいものです。
ウイスキーにおけるナッツ系の香味の表現

口にすると香ばしさを感じるウイスキーは、しばしばナッツにたとえられます。
テイスティングノートでは、ヘーゼルナッツやクルミ、アーモンドなどが具体例として用いられますが、分類しづらいならナッティー(Nutty)と表せば十分につたわるでしょう。
ウイスキーにナッツ系の香味を感じる理由
ウイスキーの香ばしさは、主に原料と熟成樽から生じます。
原料による甘みと熟成樽の木の香りがマッチすると、ナッツのような香ばしさになるのです。
場合によっては、フルーティーな香味の表現に用いると紹介したココナッツも、香ばしさの表現にしばしば使われます。
ウイスキーにおけるナッツ系の具体的な表現
| ヘーゼルナッツ | 若い樽の風味のイメージ |
| アーモンド | 古樽の風味のイメージ |
| クルミ | よりオイリーな香ばしさ |
ヘーゼルナッツとアーモンドの違いは、樽の新旧です。
ヘーゼルナッツはフレッシュな、アーモンドは年季の入った樽のイメージを表現するのに使われます。
クルミは、舌に残る独特な香ばしさの表現で使われます。
ナッツ系の香味を感じる銘柄
マッカランと同じスペイサイドにある、グレンエルギンの12年はナッツ系の香味が豊かなボトルです。
双方を飲み比べると、スペイサイドの奥深さを実感するでしょう。
ウイスキーにおけるシリアル系の味の表現

麦やトウモロコシ、小麦など原料の風味を感じるウイスキーは、シリアル系と表現されます。
具体的にはモルティ、ビスケット、焼き立てのパン、コーンなど、懐かしさやくつろぎ、豊かさを連想させる香味です。
ウイスキーからシリアル系の香味を感じる理由
穀物から造られる以上、何らかの原料に由来する香味はするものですが、シリアル系の香味がするウイスキーは、それを上回るものが少ない点で共通しています。
たとえばスモーキーさが弱いウイスキーからは、シリアル系の香味を感じやすいもの。
樽由来の香味の影響がそれほどでもない、熟成期間が短めのボトルも、シリアル系の香味を楽しむのに向いています。
ウイスキーにおけるシリアル系の具体的な表現
| モルティ | 大麦由来の香味を表す |
| ビスケット | 香ばしさのあるモルティ |
| 焼き立てのパン | さらに香ばしさのあるモルティ |
| コーン | トウモロコシ由来の香味を表す |
| コーンフレーク | 香ばしさのあるコーン |
大麦由来、トウモロコシ由来といわれても、ウイスキーを飲み慣れていない場合、よくわからないのが普通でしょう。
シリアル系の香味を把握するには、モルトウイスキーやコーンが主材料のバーボンウイスキーの、比較的若いボトルを試すことをおすすめします。
シリアル系の香味を感じる銘柄
トマーティン・レガシーは甘さやスパイシーさの中に、シリアルを感じられるボトルです。
トゥワイスアップなど常温の水で希釈して楽しむと、よりシリアル感が強まるでしょう。
ウイスキーにおけるオフフレーバーの表現

オフフレーバーは、好ましくない香味を表す言葉です。
ウイスキーから感じるタバコやレザー、硫黄、スモークといった香味に、苦手さを感じた方もいることでしょう。
しかしオフフレーバーが加わることで、ボトルに個性や厚みが出るので、蒸留所やボトルによっては、あえてオフフレーバーを加えているとも考えられます。
強すぎるのは考えものですが、まったくオフフレーバーがないボトルも味気ないといえるでしょう。
オフフレーバー系の香味を感じる理由
スモークをのぞくオフフレーバー系の香味は、蒸留方法に由来します。
蒸留には醸造で作られたエステルを凝縮、選別する役割がありますが、オフフレーバーをどれくらい残すかは、蒸留所や銘柄・ボトルによります。
オフフレーバーが多く含まれるのはモルトウイスキーの場合、2回目の蒸留時に出るフェインツと呼ばれる液体です。
飲む方との相性で、フェインツが強すぎると感じる銘柄・ボトルもあるかもしれません。
ウイスキーにおけるオフフレーバー系の具体的な表現
タバコやレザー、硫黄といったオフフレーバーは、感じたままに表現すればよいですが、少し勝手が違うのはスモークです。
| ヨード・消毒液・正露丸 | 沿岸部のピートに多い |
| たき火 | 内陸部のピートに多い |
スモークは麦芽を乾燥させる際に用いるピート(泥炭)に由来します。
ピートをよく用いるのは、スコットランドのアイラ島や内陸部、前者のピートは海藻を多く含んでおり、ヨードや消毒液、正露丸などと表現されます。
後者のピートはヘザーと呼ばれる常緑の低木が主成分で、沿岸部のピートほどの個性はありません。
オフフレーバー系の香味を感じる銘柄
オフフレーバー系の香味は、多かれ少なかれどんなウイスキーにも含まれているので、ここでは特にスモークの香味が強い銘柄を紹介します。
ヨードや消毒液、正露丸などの言葉で形容されがちなのは、スコットランド・アイラ島産の銘柄で、オクトモアやアードベッグが特に強烈です。
ヘザーによるスモークの香味が強いのは、オークニー島のハイランドパークです。
麦芽の乾燥に用いるピートに、ヘザーが多く含まれていることで知られています。
まとめ
ウイスキーの味の表現が難しいのは、発酵や熟成といった製造工程で、さまざまな味が生まれて複雑に絡み合っているからです。
それだけに豊富な表現があり、本稿では一部を紹介しました。
ウイスキーの味の表現方法を知ると、ほかの方のテイスティングノートから味をイメージしやすくなったり、誰かに味を伝えやすくなったりするメリットが生まれます。
バーでの注文やWebでの検索で、好みのボトルを見つけやすくなるなど、ウイスキーの楽しみを広げる助けになるはずです。



