投稿日:2025.04.28

ピートの断面

ウイスキー好きな方なら一度は目にしたことのある「ピート」という用語。上の写真にもある一見すると土の塊のようなものが「ピート」と呼ばれるものです。

ピートがウイスキーのスモーキーさに関係している…というところまでは知っているけれど、具体的にどんなもので、なぜスモーキーな香りがするのかといった細かい部分まではご存知ない方もきっと多いことでしょう。

そこで今回は、ウイスキーの「ピート」とはどんなものなのか詳しく解説していきます。

ピートについて知識があればウイスキーを選ぶ際の指標にもなりますので、ぜひ最後までご覧ください。

「ピート」とは?

ピート

まずは、ピートとはどんなものなのか見ていきましょう。

「ピート(peat)」とは、英語で「泥炭(でいたん)」という意味で、ヘザー、ヒースといったツツジ科の低木植物をはじめ、コケ類(ミズゴケ)や水生植物、そして海藻が長い年月をかけて堆積し炭化したもののことです。

ちなみに、アイルランドでは「ターフ」と呼ばれています。
何層にも重なっているのが写真から見てもわかるのではないでしょうか。

水分が多いため微生物による分解が進まず、”炭化があまり進んでいない湿った石炭”と言ったほうがイメージしやすいかもしれません。

15cm堆積するのにおよそ1,000年もの月日が必要とされている、貴重な天然資源です。
そのままでは水分が多いため、切り出した後に3〜4ヶ月程度乾燥させ、その後ウイスキーの製造に使用されています。

ピートがウイスキー作りに使用されるようになった理由

スコットランドではピートが豊富に採れるため、昔から燃料としてピートを使用してきたという背景があります。
スコットランドでは木材が不足していたこともあって、人々にとっては高価な石炭よりもピートのほうが身近な存在でした。

そのため、日常的にピートを使用するだけでなく、ウイスキー作りにも使用されるようになったとされています。

ピート香がウイスキーに移る理由

ウイスキーの香りを嗅ぐ男性

ピートがどんなものか理解したところで、次はどのようにしてウイスキーにスモーキーさを付与しているかです。

ウイスキーを製造するに当たって、まずはモルティングと呼ばれる精麦する工程で大麦麦芽(モルト)を乾燥させる際に燃料としてピートが使用されます。

このピートを焚いた煙が大麦麦芽に吸収され香りが移る工程こそが、ウイスキーのスモーキーさの秘密。

そしてこのスモーキーな香りのことを「ピート香」と呼びます。

かつてはピートが安く手に入るということでピートのみ使用し乾燥させていたそうですが、現在は原料の安さというよりも、ピート香を吸収させた大麦麦芽「ピーテッドモルト」を作るために使用されるほうが一般的です。

スモーキーさが魅力のウイスキーにとってはこの「ピーテッドモルト」はなくてはならない大切なものであり、あの特有の強いスモーキーさはピーテッドモルトにしか出せないと言って良いでしょう。

「ピート香」とはどんな香り?

一括りに「ピート香」と言っても、その香りにも以下のような種類があります。

  • ピーティー…スモーキーの中でも上質な香り、薫香
  • メディシナル…海藻から来るヨード香(薬品香)
  • ハーシュ…良い香りとは言えないネガティブな香り

よく言われているのが「燻製のような香ばしい香り」「正露丸のような薬品香」「海藻や磯のような潮気のある香り」などがありますが、それぞれ癖があり個性が強い香りなため、好みが分かれるのも仕方ないことかもしれませんね。

愛好家が多いのはなぜ?

ピート香はウイスキーの愛好家にとって、他にはない魅力的な香りの要素でしかありません。

ピート香が放つ特有のスモーキーさは、ウイスキーに複雑かつ力強い個性を与えてくれます。
はじめは苦手と感じていても、他のスピリッツでは味わえない香りに気づいたらハマってしまう方が多いのです。

銘柄によってもその個性はさまざまで、当然好き嫌いも分かれてしまいますが、一度気に入ったら抜け出せない魅力がピート香にはあると言えるのではないでしょうか。

ピートの個性はどのように決まるのか?

ピートを乾燥させる様子

ピートを使用したものとピートを使用していないものであれば違いは歴然ですが、ではピートを使用したものの中でどうやって個性を出しているのかを見ていきましょう。

ピートは採れる地域によって香りが異なる

ピートは主にスコットランド北部の寒冷地にある湿原で採れるのですが、日本国内では北海道の石狩地方や釧路湿原など、限られた地域でのみ見られます。

実はこの、産地の違いによってもピートの香りは違ってきます。
というのも、ピートはその土地の気候や地質、生息する植物によっても成分が異なるためです。

たとえば海の近くで取れたピートを使用したウイスキーの場合は、その豊富な海産物を含むピートから生まれた、独特なスモーキーさと潮の香り、ヨードチンキのような薬品香がします。
アイラ島の海近くで製造されるアイラウイスキー「アードベッグ」「ラフロイグ」「ボウモア」などがその代表格と言えるでしょう。

反対に内陸で採掘されるピートは、ヘザーやヒースなどの植物が主な成分となっており、スモーキーさもありつつ、よりマイルドで薬草や花の香りを感じさせるといった特徴があります。
ヘザーを豊富に含んだオークニー諸島で製造される「ハイランドパーク」が良い例です。

ピート香の強さは「焚く時間」と「使用量」によって変わる

ピートの香りは採掘場所によって異なりますが、ピート香の強さはどのくらいの時間焚き、またどれだけピートを使用したのかによって変動します。

長時間ピートを焚く、あるいは大量にピートを用いればピート香の強いものになりますし、反対に短時間焚く、少量のピートを使用した場合はピート香の弱いウイスキーが仕上がります。

上記の違いだけでなく、蒸留所独自の製法・熟成期間・樽の種類といったものでピート香の個性はより強まります。

このようにさまざまな要因が重なって、各メーカーの個性を生み出しているのです。

ピート香の強さは数値で判断できる

ちなみに、このピート香の強さは「フェノール値(ppm)」という数値で判断できます。
ウイスキーの製品情報や解説文に記載されていますので、気になるウイスキーがあれば調べてみるのがおすすめです。

ピート香の強さは以下の数値を参考にしてみてください。

フェノール値の高さによる名称の違いと特徴
ノンピート0ppmピートが使用されていないもの
ライトピート10ppm以下スモーキーさが軽め
ミディアム25ppm程度中程度のスモーキーさ
ヘビーピート40〜50ppm以上スモーキーさが強め

上記のとおり、基本的にはこの数値が高いとスモーキーさが強いということになるのですが、これはあくまで大麦麦芽の燻製度合いを計測したものです。

先述したように、ウイスキーのスモーキーさはさまざまな要素が絡み合ってできあがるものですので、必ずしも製品として仕上がったウイスキーのピート香に直結するものではありません。

なお、アイラウイスキーのフェノール値は、ミディアム〜ヘビーピートが一般的です。
次の章では、豊富なアイラウイスキーの中からとくにピート香が楽しめる銘柄を紹介していきますので、ぜひご覧ください。

ピート香が楽しめるおすすめ銘柄・ボトル

グラスに注がれたウイスキー

最後に、スモーキーなピート香を存分に味わえるスコッチウイスキーの一種、アイラウイスキーの中から、おすすめ銘柄とボトルをいくつかご紹介いたします。

今回はフェノール値の高いものから順に紹介しますので、ご購入の際の参考にしてくださいね。

アードベッグ|Ardbeg

アードベッグ10年

創業1815年よりスコットランド・アイラ島の南部にあるアードベッグ蒸留所で製造される「アードベッグ」。
小さな蒸留所ではありますが、海や山の恵みを最大限活かし、個性溢れるウイスキー作りを行っています。

アイラ島で製造されるモルトウイスキー、アイラウイスキーの中でも、フェノール値は55〜60ppmと高く、とくに個性を放つ銘柄として知られています。

一時はウイスキーの人気低迷による打撃を受けたものの、今では復活を遂げ、世界中に熱狂的なファンを持つまでになりました。

画像にもある「アードベッグ10年」は同銘柄のスタンダードボトルです。
ヘビーピートであるアイラモルト特有の強いピート香(薬品に近いヨード香)から始まり、シガレットのようなスモーキーさの後に、桃や柑橘類を思わせるフルーティな甘味とバニラのようなまろやかな味わいが続いていきます。

飲み始めはスモーキーさに圧倒されますが、甘い余韻が特徴で、個性的でありながらも飲みやすいテイストと言えるでしょう。

ラフロイグ|Laphroaig

ラフロイグ10年

「ラフロイグ」は、創業者・ジョンストン兄弟が家畜業の合間に行っていたウイスキー作りから生まれました。
「アイラの王」と呼ばれ、アードベッグと同様にアイラモルトを代表する銘柄のひとつです。
”好きになるか嫌いになるかのどちらか (You either love it or hate it.)”の強烈なキャッチコピーでも知られています。

ラフロイグは、アイラ島南部「ラフロイグ蒸留所」で製造されています。
コケ類や海藻などの香りが強く水分量の多いピートを使用しているため、特有の磯の香りや正露丸のような薬品香があり、フェノール値で表すと40〜45ppmとアードベッグほどではないもののかなり高めの数値。

アードベッグがスパイシーとするならば、ラフロイグはコクと甘味、磯や潮といった印象がより強い印象です。

イギリス国王であるチャールズ3世が愛飲していることでも知られる「ラフロイグ10年」は、同銘柄のスタンダードボトルです。
一口含むとまず強いピート香が鼻に抜け、その後ゆっくりとバニラのような甘い香りと共に果実の甘味が感じられます。

舌触りもなめらかで、オイリーなコクと余韻が長く楽しめるウイスキーです。

ラガヴーリン|Lagarvulin

ラガヴーリン16年

「ラガヴーリン」は、1816年よりラフロイグ蒸留所から程近いラガヴーリン蒸留所にて製造され始めました。

19世紀後半にシングルモルトが世界的に流行したことで広く注目されるようになり、ラフロイグやボウモアの人気が高まるまでは多く飲まれていた伝統ある銘柄です。
著名なブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」の創業者ピーター・マッキーは、かつてラガヴーリン蒸留所で修行したとされており、ホワイトホースのキーモルトのひとつにラガヴーリンを選んだことでも知られています。

本格的なラガヴーリンの味わいを楽しむなら「ラガヴーリン16年」がとくにおすすめ。
ラガヴーリンのスタンダードでもあり、「アイラの巨人」とも称される根強いファンのいるボトルです。

フェノール値は34〜38ppmと高めなため、一見癖が強いかと思われますがそんなことはありません。
アイラウイスキー特有の海の香りとスモーキーさがありながらも、シェリー樽由来のフルーティな甘味や優しさが感じられます。
熟成年数が長いことで刺激が少なく、穏やかな余韻の中にドライな味わいがあるのが魅力で、アイラウイスキーの中でも比較的飲みやすいため、初心者にもおすすめのウイスキーです。

ボウモア|Bowmore

ボウモア12年

アイラ島中心部に位置する、1779年に設立された島内最古のボウモア蒸留所にて製造される「ボウモア」。
第一貯蔵庫は海抜0メートルに位置しており、ピートや製造工程のすべてがダイレクトに潮風の影響を受け、自然と調和しながら製造される海のシングルモルトです。

1980年、当時のイギリスの女王エリザベス2世が蒸留所を訪問した際に樽詰めされたウイスキーを、2002年女王戴冠50周年を記念し「BOWMORE THE QUEEN’S CASK」として王室に献上したという名誉ある銘柄です。
こうした経歴と、気品溢れる力強い味わいから「アイラの女王」と評されています。

写真にもある「ボウモア12年」は同銘柄の中でも基本となるボトルで、ファンから広く愛される定番品です。
フェノール値は20〜25ppmと中程度で、スモーキーさと潮の香りの中にレモンやはちみつを思わせる香りと、ダークチョコレートのようなコク、そして繊細な余韻が続きます。

もちろん癖はあるのですが、数あるアイラモルトの中でも非常にバランスが良く、飲みやすいウイスキーと言えるでしょう。

まとめ

ラガヴーリン蒸留所

今回はウイスキーの重要な要素である「ピート」について詳しく解説いたしました。

ピートは野草やコケ、海藻などの植物が長い年月をかけて堆積し炭化したものでしたね。
一括りにピートとは言っても、その産地や製法によってさまざまな個性が生まれ、魅力溢れるウイスキーへと変貌していきます。

このピートを焚いたことで生まれる「ピート香」は、好き嫌いが分かれるものではありますが、一度ハマったら抜け出せない中毒性の高い魅惑の要素でもあります。
一癖あるウイスキーをお探しなら、一度試してみてはいかがでしょうか。


弊社「サケウル」では、今回ご紹介いたしましたアードベッグやラフロイグをはじめ、さまざまな種類のウイスキーを買取しています。
年代物に限らず、NVやその他のお酒類も併せて受け付けております。

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