
投稿日:2025.05.12
ウイスキーは穀物を原料にして樽熟成された蒸留酒ですが、その製造方法は意外と知られていません。
ここでは人気が高いモルトウイスキーの製造方法を中心に、グレーンウイスキーやブレンデッドウイスキーの製造方法を解説しています。
製造方法の違いとあわせてそれぞれの特徴もわかる、ウイスキーに不慣れな方にもぴったりの内容です。
モルトウイスキーの製造方法
サントリー山崎や白州、ニッカ余市や宮城峡、竹鶴など、モルトウイスキーの人気には驚かされます。
限定版・特別版には高値がついており、通常製造されているレギュラーボトルですら店頭での購入はほぼ不可能です。
そんなモルトウイスキーは、製麦から始まる長い工程で製造されています。
- 製麦
- 糖化
- 発酵
- 蒸留
- 熟成
- 調合
- 後熟
- ビン詰め
それぞれをくわしく見ていきましょう。
1.製麦
モルティングとも呼ばれる製麦(せいばく)は、大麦から麦芽を作る工程です。
大麦を発芽させるのは、そこにデンプンを糖に変える酵素が含まれるから。
デンプンから直接アルコールは作れないので、日本酒なら蒸した酒米に麹をもちいるように、ウイスキーでは麦芽の糖化酵素の力を借りるのです。
ところが、大麦が発芽しすぎると酵素は失われてしまいます。
タイミングを見計らって加熱・乾燥し、発芽を止めて麦芽が完成します。
【伝統的製法・フロアモルティング】
フロアモルティングとは蒸留所内の床に水に浸した大麦を広げるなど、自社内で製麦をおこなうことで、スコッチウイスキーの伝統でした。
しかし次第におこなわれなくなったのは、フロアモルティングに広い空間が必要で効率が悪いため、外部の業者から麦芽を仕入れるようになったからです。
近年ではフロアモルティングをおこなう蒸留所はまれなので、そのようなところは伝統的製法を守っていると考えられるでしょう。
【香りの重要な一要素・乾燥】
発芽を止めるには熱を加えますが、その工程はウイスキーの仕上がりに大きな影響を与えます。
たとえばスコットランド・アイラ島のウイスキーは、独特のスモーキーさで知られていますが、これは乾燥に用いるピート(泥炭)を燃やしたにおいが麦芽に付くからです。
同じピートでも産地によって完成後のウイスキーの香りが変わるといいますから、麦芽の乾燥はウイスキーの仕上がりを決める上でも重要といえそうです。
2.糖化
麦芽を粉砕して温水と混ぜると、酵素の働きで含まれていたデンプンが糖へと変わります。
できあがったものは麦汁と呼ばれており、口にすると甘みと大麦の風味を感じるでしょう。
不純物を取り除くためにろ過をおこなうと、麦汁が完成します。
【お酒の命・仕込み水】
乾燥させて粉砕した麦芽に加える温水は、仕込み水と呼ばれます。
仕込み水はウイスキーに限らずお酒の出来を左右する大きな要素なので、蒸留所や醸造所の立地は、酒造りに適した水質が必要です。
山崎蒸留所が建設場所に選ばれたのは、本場・スコットランドの専門家がお墨付きを与えたほどの仕込み水が採れるからだとか。
飲んでおいしく無味無臭かつ、ミネラル分のバランスがよく酵素の働きを助けてくれることが重要になります。
3.発酵
糖化で作られた麦汁に酵母を加えて発酵させると、アルコール度数が7%くらいのもろみになります。
麦汁に含まれる糖分が、酵母の働きでアルコールと炭酸ガスに変わるのですが、同時に香り成分も作られるので、ウイスキー造りに大きな影響を与える工程です。
【サントリーでは複数の酵母を使用】
かつての日本酒では酒蔵に住みついた酵母が、それぞれの味わいの違いを作っていたとか。
ウイスキーに限らず、お酒造りにおける酵母の働きは重要です。
サントリーのウイスキー造りでは求める香りや味に合わせて、上面発酵酵母、液中分散酵母などの複数を使い分けているようです。
【もろみとビールの違いとは】
麦芽を原料にしたもろみにはアルコールと炭酸ガスが含まれていると聞き、ビールをイメージする方も多いでしょう。
しかし、もろみにはビールとくらべて不純物が多いことや、ビールに必須のホップによる香りづけがおこなわれないなど、両者には大きな違いがあります。
ビールを蒸留してもウイスキーのようなものにはなりますが、おいしいウイスキーにはならないのです。
4.蒸留
アルコール度数7%くらいのもろみが完成したら、蒸留してアルコールの純度を高めます。
蒸留とは液体の沸点の違いを利用して、より沸点の低いものを取り出す方法です。
アルコールの沸点は水よりも低い80度なので、蒸留器を加熱してアルコールを多く含む蒸気を取り出し冷却して純度を高めていきます。
スコットランドや日本のモルトウイスキーでは、蒸留は通常2回おこなわれ、アルコール純度は65%から70%まで高められます。
【独特の蒸留器・ポットスチルとは】
モルトウイスキーの製造に通常使われるのは、ポットスチルと呼ばれる独特の単式蒸留器です。
特徴はコラム冒頭の写真の通り美しい形状で、銅独特の輝きを放っています。
とはいえ、すべてのウイスキーの製造にポットスチルが用いられるわけではないので、注意が必要です。
5.熟成
蒸留を終えたアルコール度数65〜70%の液体はニューポットと呼ばれますが、無色透明でよく知られるウイスキーにはほど遠いものです。
これにウイスキーらしい色や香り、味わいを加えるのが熟成で、さまざまな樽に貯蔵されたニューポットは数年から数10年寝かされて原酒へと成長します。
ウイスキーの風味は熟成で決まるといってもよいくらい重要な工程です。
【熟成年数が長いほどよいとは限らない】
サントリー山崎・55年など銘柄の後につく年数は、ウイスキーを構成する原酒の中でもっとも短い熟成年数を表しており、熟成年数が長いものほどよいものとされてきました。
しかし、近年ではNVやNAと呼ばれる熟成年数のないボトルが増えているのも事実。
NVやNAを構成する原酒は、熟成年数を表すほどでもない、若い原酒が使われていることを表しています。
サントリー山崎・55年はオークションで8,500万円超の価格がつくほどなので、高級であることは間違いありません。
しかし、よいかどうかの判断は、飲む人にゆだねられていると考えましょう。
【用いられる樽が仕上がりを決める】
熟成年数の表記にかわり、近年増えているのが熟成した樽を表記したボトルです。
たとえばサントリー山崎・シェリーカスクなら、シェリー酒の熟成に使用した樽でニューポットを寝かしていたことを表しています。
シェリー樽で熟成させたウイスキーは、果実酒由来の甘い風味と香りを持つそう。
樽の経歴や素材、大きさといったバリエーションで、さまざまな原酒が完成します。
樽のバリエーションによる仕上がりの変化については、ここに書ききれないので回を改めますが、ウイスキー選びでは熟成樽にも注目してみましょう。
6.調合
熟成を終えた原酒が、そのままビン詰めされることはごくまれです。
バッティングもしくはブレンディングで調合され、銘柄やボトルにふさわしい味や香りに整えられます。
【バッティングとは】
バッティングとは同じ蒸留所で造られた、同じ種類の原酒を調合することです。
モルト原酒同士を調合するとシングルモルトと呼ばれるウイスキーが、後述するグレーン原酒同士だと、シングルグレーンができあがります。
【ブレンディングとは】
モルトウイスキーにおけるブレンディングは、異なる蒸留所で造られたモルト原酒を調合することです。
たとえばニッカ竹鶴はモルト原酒同士を調合したものですが、用いられているのは余市蒸留所と宮城峡蒸留所で造られたものです。
したがってニッカ竹鶴はシングルモルトではなく、ブレンデッドモルトウイスキーと呼ばれています。
【シングルカスクとは】
ほかの樽の原酒と調合するのがもったいないくらい、熟成がうまく進んだ樽は、シングルカスクとして単独でビン詰めされます。
シングルバレルとも呼ばれるシングルカスクは、しばしば特別版・限定版として出荷され、マニアを中心に高い人気となります。
7.後熟
調合を終えたウイスキーは、ふたたび樽で寝かされます。
目的はウイスキー同士をなじませるため、もしくは新たな風味や香りを加えるためで、どのような樽で後熟されたかもウイスキー選びのポイントです。
たとえばシェリーカスク・フィニッシュとラベルにあるモルトウイスキーなら、バッティングののちに、シェリー酒を熟成させた樽で後熟されたという意味になります。
8.ビン詰め
後熟が終わるといよいよビン詰めですが、その前におこなわれるのが低温ろ過と加水です。
低温ろ過とはウイスキーを0度前後に冷却して、不純物を取りのぞく工程です。
冷却するのはウイスキーに溶けていた不純物を取り出しやすくするためですが、中にはこれにより味や香りが損なわれると考える方もいるでしょう。
低温ろ過がおこなわれていない「ノン・チルド」ウイスキーなら、樽出しに近い味わいが楽しめるかもしれません。
加水とは樽出ししたウイスキーに水を加えてアルコール度数を低め、飲みやすくする工程です。
【カスクストレングスとは】
加水をおこなわずにビン詰めされたボトルのことで、樽出しそのままのアルコール度数が楽しめます。
加水によりウイスキー本来の味わいが失われるという、マニアな方々に高い人気となっています。
グレーンウイスキーの製造方法
グレーンウイスキーとは、トウモロコシやライ麦、小麦などの穀類を原料にしたウイスキーのジャンルです。
モルトウイスキーとほぼ同じ製造方法ですが、次の2点が大きく異なります。
【原料】穀類を使う
糖化のための酵素を得るために大麦麦芽も使われますが、おもに使われるのはそのほかの穀類です。
トウモロコシがメインの場合はコーンウイスキーという風に区別する場合もある一方で、スコットランドや日本では、まとめてグレーンウイスキーと呼んでいます。
【蒸留】連続蒸留器を使用する
グレーンウイスキーではポットスチルを複数つなげたような仕組みの、連続蒸留器が用いられます。
アルコール度数を一気に上げられ作業効率が高まるメリットの一方で、その際にもろみが持つ味や香りが薄れるデメリットもあります。
モルトウイスキーに慣れた方は、グレーンウイスキーに風味や香りの乏しさを感じるかもしれません。
【香味豊かなグレーンウイスキー】
グレーンウイスキーの中には特殊な蒸留器を用いることで、香味の豊かさを実現しているものもあります。
たとえばニッカ・カフェグレーンは世界的にも珍しいカフェ式連続蒸留器で、原料の個性を引き出しているのが特徴です。
また、さまざまなグレーンウイスキーを造りわけてきた経験から、理想的な銘柄を作り出したというのがサントリー知多。
知多蒸留所のグレーン原酒をバッティングした、豊かな風味や香りを持つシングルグレーンウイスキーです。
ブレンデッドウイスキーの製造方法
ブレンデッドウイスキーとは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたジャンルです。
サントリーならレッドや角瓶、オールド、ニッカならハイニッカやブラックニッカなどなど、数多くの銘柄がありますがそれもそのはず。
世界で飲まれているウイスキーの実に90%がブレンデッドなのです。
ブレンデッドウイスキーは洗練された香りや味、飲みやすさを追求して、調合されています。
サントリー響やニッカ鶴などの高級銘柄では、ブレンデッドウイスキーのよさが存分に楽しめるでしょう。
【ワールドブレンデッドウイスキーとは】
サントリー碧やニッカ・セッション、キリン陸など、ワールドブレンデッドウイスキーは近年注目されているジャンルです。
サントリー碧では世界5大ウイスキーをブレンドしているように、国産以外のウイスキーも要素に加えているのが特徴です。
登場の背景にはモルトウイスキーブームの過熱があり、品薄になった原酒を補うためという説もありますが、今までにない香りや味はおおむね好評のよう。
新たなウイスキーのジャンルと考えられるでしょう。
【シングルブレンデッドウイスキーとは】
少しややこしい名称ですが、これは同じ蒸留所で製造されたモルトとグレーンの原酒をブレンドしたウイスキーに与えられるものです。
2つのジャンルのウイスキーを製造できる蒸留所は相当な規模なので、非常にめずらしい名称といえます。
キリンディスティラリーの富士御殿場蒸留所や、スコットランド・ハイランド地方のロッホローモンド蒸留所が、シングルブレンデッドウイスキーを製造していることで知られています。
まとめ
モルト・グレーン・ブレンデッドという3種類のウイスキーの製造方法について解説してきましたが、世界にはまだまだたくさんのウイスキーがあります。
ポットスチルウイスキーなどここでは触れられなかったジャンルの製造方法については「世界のウイスキーの作り方!合法・自家製ウイスキーの作り方も紹介」を、ぜひご覧ください。
弊社「サケウル」は、サントリー山崎や白州、知多、響などモルト・グレーン・ブレンデッドウイスキーを幅広く買取っています。
ほかのショップには負けない価格でお応えしますので、査定だけでもお気軽にご利用ください。



