投稿日:2025.04.16

暖炉の前でウイスキーを楽しむ様子

熟成とともに味わい深く変化していくウイスキー。

「山崎12年」や「ザ・マッカラン18年」など年数がラベルに記載された銘柄はたくさんありますよね。

皆さんは、この年数が何を表したものかご存知ですか?

“記載された年数のぶんだけ熟成されたもの”だと認識している方が多いかと思いますが、実はそうではありません。

今回は、ウイスキーにおける「年数」の定義について解説していきます。

ウイスキーの詳しい製造工程や、よく目にする「ノンヴィンテージ(NV)」についても併せてご紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧になってください。

まずはウイスキーの製造工程を知ろう

ウイスキーの蒸留所のイメージ

ウイスキーの年数について知るには、まずはどのようにウイスキーが製造されているのか知っておきましょう。

ウイスキーの製造工程

ウイスキーは原料や製造方法によって以下のように種類が分かれています。

  • モルトウイスキー…大麦麦芽のみ使用
  • グレーンウイスキー…トウモロコシ・ライ麦といった穀物各種を使用
  • ライウイスキー…ライ麦のみ使用
  • コーンウイスキー…トウモロコシのみ使用
  • ブレンデッドウイスキー…モルトとグレーンを掛け合わせたもの

それぞれ原料や蒸留する機械の違いはあるものの、おおよそ同じような流れで製造されています。

今回は例として、モルトウイスキーの製造工程を挙げますので、参考にしてみてください。

  1. 製麦…ウイスキーの主原料(大麦)を発芽させ乾燥させる
  2. 糖化…麦芽を粉砕し仕込み水と混ぜ、デンプンを糖化後に濾過して麦汁を作る
  3. 発酵…麦汁に酵母を加え発酵させ、アルコール(約7〜9%)を生じさせる
  4. 蒸留…目的のアルコール度数になるまで数回蒸留し、純度や香気成分を高める
  5. 熟成…樽に入れ長い期間をかけて木の香りを移し、味わいに変化をつける
  6. ブレンド…原酒同士を調合し、品質を安定させる
  7. 加水…完成したウイスキーに水を加え、アルコール度数を調整する
  8. 後熟…風味を高めより品質を安定させるために数週間~数ヶ月(長いもので2年)ほど貯蔵する
  9. 瓶詰め

各工程について、もう少し詳しく見ていきましょう。

①精麦(モルティング)

製麦(モルティング)とは、簡単に言うとウイスキーの原料である大麦を「モルト(大麦麦芽)」に変える以下のような作業のことです。

  1. 大麦を仕込み水に浸す→空気に触れさせる、という工程を何度か繰り返す
  2. 根が出てきたのが確認できたら発芽室へ運び発芽させる
  3. 成長を止めるために大麦を乾燥させる

なぜ発芽させる必要があるのかというと、実は大麦をそのまま加えてもデンプンを糖化できないためです。

大麦を発芽させる際に「糖化酵素」が生成されるのですが、これが糖化・発酵には必要不可欠。
そのため、穀物を発芽させる精麦という工程が必要となるのです。

②糖化(仕込み)

糖化の目的は、次の工程である発酵に必要な「麦汁(ウォート)」を作ること。

まず、精麦で作られた麦芽を粉砕します。その後「マッシュタン」と呼ばれる糖化槽に入れ、温水にした仕込み水を加えてドロドロのお粥状にします。

この工程をはさむことで麦芽の中の酵素が働き、麦芽のデンプンが糖分へと変化しやすくなるのです。

糖化が完了したら、濾過して麦汁を作り、発酵へと進みます。

③発酵

発酵とは、麦汁を「ウォッシュバック」と呼ばれる木製またはステンレス製の発酵槽に入れ、酵母を加えて発酵させ、7〜9%ほどのアルコール発酵液(もろみ)を作る工程のことです。

酵母には麦汁の中の糖分を分解しアルコールと炭酸ガスを作り出す働きがあり、ここでウイスキー特有の香味成分が作られます。

酵母の種類や発酵条件によっても香りが大きく異なるのですが、

  • 発酵時間が長い(酸味のあるもろみ)…軽やかな味わいのウイスキー
  • 発酵時間が短い(酸味の少ないもろみ)…重厚な味わいのウイスキー

このように、発酵にどれだけ時間をかけるかによってもウイスキーの味わいに変化が生まれます。

④蒸留

蒸留は水とアルコールの沸点の違いを利用し分離させる工程です。

水の沸点が100度に対し、アルコールの沸点は約78度。
この性質の違いを利用し、先に揮発するアルコールの蒸気を冷やし液体化させることで、香味成分やアルコール分の高いスピリッツを抽出することが可能となります。

もろみの段階ではまだ度数7%と、とてもウイスキーとして売れるような状態ではありませんが、この蒸留の工程によって65〜70度までアルコール度数を高められます。

なお、蒸留する機械や回数で仕上がるウイスキーが異なり、

  • モルトウイスキー …「単式蒸留器(ポットスチル)」を使用し、最低2回蒸留する
  • グレーンウイスキー …「連続式蒸留器」を使用し、1回蒸留する

とするのが一般的です。

⑤熟成

蒸留したての液体は「ニューポット(ニューメイク)」と呼ばれるまだ無色透明な液体です。

このニューポットを木製の樽で熟成させることにより、ウイスキー特有の香りや味わい、深い琥珀色へと変化していくのです。

樽に使用される木材や貯蔵場所はもちろん、熟成期間など、多くの条件によってウイスキーの味わいや香りに個性が生まれます。

ちなみに、この熟成する間に毎年2〜3%程度自然蒸発していくのですが、こうして自然に減るぶんを、昔の職人たちは”天使が飲んでしまった”と考え「天使の分け前(Angel’s share)」と呼んでいたそうです。

反対に、熟成が終わり樽から瓶詰めする際に、樽の木材に浸み込んでしまう部分を「悪魔の取り分」と呼んでいます。

熟成年数による違い

ウイスキーは熟成年数によって以下のように名称や特徴が異なります。

年数によって異なる呼び名・熟成年数・特徴
ニューポット(ニューメイク)熟成期間:〜3年・蒸留を終えたばかりの無色透明な液体
・アルコール度数が65〜70%と高い
・荒々しく刺激的な味わい
エマージング熟成期間:3〜10年・原料本来の味わいが楽しめる熟成期間が短いものが好まれる
・キリリとした爽やかな味わい
ブルーチップ熟成期間:30年以上・ウイスキー樽の頂点とも言える最高級のもの
・熟成期間が長いものほど奥行きやコクがある
・高級感が漂うなめらかで深い味わい
熟成期間は長ければ良いというわけではない

熟成がいかに大切か伝わったかと思いますが、ウイスキーはどんなものでも熟成期間が長いほど良いというわけではありません。

実は、ウイスキーにも適した熟成期間「マチュレーションピーク(原酒の良さがもっとも現れる期間)」があり、一般的に10〜20年ほどと言われています。

稀に30年を超えても熟成のピークに達しないものがあるのですが、このようなウイスキーは上記の表にもあるように「ブルーチップ」と呼ばれ、なかなかお目にかかれない大変希少なものです。

なお、基本的にはピークを過ぎると徐々に原酒の香りや個性が消え味が単調になり、樽の香りが強くなっていきます。

しかし、ピークを超えたからといっても劣化しているわけではなく、その後複数の原酒をブレンドする際の風味づけとして活かされています。

⑥ブレンド(ヴァッティング)

樽での熟成が完了すればいよいよ完成かと思いきや、まだここで終わりではありません。

ウイスキーの熟成には容量180〜480Lの木製の樽が使用されるのですが、大きなタンクを使用しまとめて製造するのとは違い、樽ごとに熟成度合いや風味が異なります。

しかし、製品化するに当たっては、安定した品質が求められるため味を均一化させる必要があります。そのため、異なる樽で製造された原酒をブレンドするのです。

なお、ブレンドする原酒が異なるものか同じものかで以下のように分類しています。

  • ブレンド…モルトとグレーンなど、異なる種類の原酒を混ぜ合わせること
  • ヴァッティング…モルトとモルト、グレーンとグレーンなど、同種の原酒を混ぜ合わせること

ちなみに、このブレンドする工程はブレンデッドウイスキーのみならず、一見すると必要なさそうなシングルモルトウイスキーでも行われています。

一切ブレンドせず作る「シングルカスク」

中には品質の高さから敢えてブレンドせず、ひとつの樽(カスク)の原酒のみ使用する「シングルカスク」という種類もあります。

数ある樽の中から品質の高いもののみ厳選され、限られた本数のみ瓶詰めされるため、希少性が高くなかなか手に入らないことで知られています。

⑦加水

加水とは、その名の通りウイスキーに水を加える工程のことです。

加水の主な目的はウイスキーのアルコール度数を40〜43%程度に下げることなのですが、水を加えることでウイスキー特有の香りを際立たせる、という作用もあります。

一切水を加えない「カスクストレングス」

シングルカスクの一種で、水を一滴も加えず製品化する「カスクストレングス(cask strength)」という種類もあります。
樽(カスク)の強さ(ストレングス)という名称通り、樽からそのまま抽出したことを意味します。

アルコール度数60%程度の力強い味わいが魅力とされ、限定版・特別版といった少量しか出回らない製品であることが多いため、高値で取引される製品のひとつです。

⑧後熟(マリッジ)

ここまでの工程をすべて終えた後、再び寝かせることを「後熟(マリッジ)」と呼びます。

複数の原酒をブレンドしたものを馴染ませ、風味を高め品質を安定させるために後熟は必要となります。

短いもので数週間〜数ヶ月、長いもので2年程度寝かせてバランスを整えるのが一般的です。

⑨瓶詰め

ここでようやく商品の顔である瓶へと詰められます。

このとき、多くの製品には「冷却濾過(チルフィルタリング)」が行われるのですが、これはウイスキーに含まれる、冷やすと白濁してしまう成分を取り除く作業のことです。

中には樽本来の味わいを楽しんでもらうために、濾過しない製品を「ノンチルフィルタード」と表記し売っている場合もあります。

なお、ウイスキーはワインとは異なり、瓶詰めされた後にこれ以上熟成することはないため、開封後は1年を目安に飲みきることをおすすめいたします。

ウイスキーの「年数」とは?

ダルモアのボトルと注がれたグラス

製造工程について確認したら、いよいよ本題の「年数」についてです。

ウイスキーの製造工程について見ていく中で、基本的にウイスキーはブレンドして作られるとお伝えしました。
では年数が「12年」と表記されたものは「12年熟成した樽の原酒をいくつかブレンドしたもの」なのでしょうか?

ウイスキーの「年数」とは、その製品に使用された中で樽熟成年数のもっとも短い原酒の酒齢を示しています。

すなわち、12年ものと14年もの、18年ものの3つがブレンドされた製品であれば「12年」と表記することになります。「最低○年以上熟成している」という意味合いで表記しているので、山崎12年であれば”最低12年以上熟成された山崎”ということです。

ちなみによく似たキーワードとして、ワインに用いられる「ヴィンテージ表記」がありますが、これはいつ製造されたものなのか表記したものです。
何年熟成したのか表記するウイスキーの年数とはまったく異なるものなので、間違えないようにご注意ください。

なぜ異なる年数のものをブレンドするのか?

かつては12年ものに30年ものを少量ブレンドしていた製品もあったそうですが、12年と30年の原酒では味わいが違いすぎるのでは?と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

12年なら12年同士のほうが味わいに統一感が生まれそうな気もしますよね。

この異なる年数の原酒をブレンドするのも、実は味わいを均等にするためです。

樽によって味わいが異なるのももちろんですが、やはり製造された年によっても仕上がりにばらつきがあります。樽もその中身のウイスキーも、”生き物”と例えられるほど経過が読めません。

熟成の進み方もそれぞれ異なりますので、製品全体の品質を均一に仕上げるには年数の異なる原酒をブレンドする必要が出てくるのです。

年数表記のあるウイスキーが高価な理由

並べられたジャパニーズウイスキー

「山崎12年」「白州18年」など、年数が表記されたものは市場でも高値で取引されていますよね。

”年数表記のあるウイスキーが高いのは味が美味しいから”と思われるかもしれませんが、これらのウイスキーが高価なのは、必ずしも美味しいからというわけではありません。

もちろん、ウイスキーは熟成が進めば味わい深く変化していくものなのですが、ただ樽に入れて置いておけば必ず熟成されるというわけではなく、熟成が上手くいく樽もあればそうでない樽もあります。
また、放っておいても年間2〜3%は自然に蒸発していってしまうため、年々販売できる本数が限られていきます。

こうした希少性の高さ、若いウイスキーでは味わえない香り・味に価値があり、高値が付けられているのです。

「ノンヴィンテージ(NV)」との違いは?

年数について見ていくと、中にはラベルに年数の記載がないものを多く見かけると思います。

このラベルに年数表記がないものを「ノンヴィンテージ(NV)」と呼ぶのですが、ノンヴィンテージは熟成期間が短いものから長いものまで幅広い原酒が使用されているものであり、言葉の通り”ノンヴィンテージ=熟成されていないもの”ということではありません。

ではなぜ年数を表記しないのか?というと、年数を表記する場合には「最低○年以上のものを使用しなければならない」という条件が生まれますが、ノンヴィンテージであればどんな年数のものをブレンドしても表記する必要がないため、ブレンドできる原酒の幅が広がるからです。

数字に囚われることなくブレンドする原酒を選択できるという点で見ると、ウイスキーブレンダー(原酒をブレンドし品質を維持・向上させる技術者)の技術の高さが試されるウイスキーと言えるでしょう。

まとめ

ウイスキーボトルとグラス

今回はウイスキーの年数について解説いたしました。

現在、シングルカスクを除いたすべてのウイスキーは異なる原酒をブレンドして製造されています。

今回解説した「年数」においては、ブレンドされた原酒のうち、もっとも若いものがラベルに記載されます。ラベルの年数ぶん熟成されていると認識していた方も多いかと思いますが、実際には「最低○年以上熟成されたもの」でしたね。

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